共テ公共・政経ゼロから8割講座 / 第3章・第11講
司法の独立と違憲審査
裁判所が政治の都合で結論を変えてしまったら、私たちの権利は守られるでしょうか。今回は、公正な裁判を支える独立の仕組みから、裁判員や検察審査会による市民参加までを学びます。
「誰が、何を、どの段階で判断するか」を順番につなげると、似た名前の制度も区別できます。人数の計算では、合計だけでなく条件を確かめながら考えていきましょう。
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赤字の語句と[番号]は、授業テキストの穴埋め[33]〜[48]に対応しています。
項目名を押すと解説が開きます。各項目の確認問題では、選択肢を選んで「答え合わせ」を押すと正誤と考え方を確認できます。「もう一度解く」で再挑戦できます。
回答は保存・送信されません。再読み込みするとリセットされます。記述問題は自動採点ではなく、解答例と比べて確認する形式です。
1.公正な裁判のための独立
司法の独立は、私たちの権利を守る
今回は、裁判所の仕組みを学びましょう。裁判所は、具体的な争いについて法を適用し、判断する機関です。国民の権利を守り、権力の行使をチェックする役割があります。
例えば、行政の処分によって権利を侵害されたと考える人が、裁判を起こしたとします。その裁判の結論を、争いの相手である行政が命令できたら、公正な判断を期待できるでしょうか。政治的に強い立場にある人の都合で結論が変わることを防ぐため、司法の独立が必要になります。
この原則を[33]司法権の独立といいます。裁判所が国会や内閣から不当な介入を受けないことに加え、一人ひとりの裁判官が独立して職権を行うことを含みます。
最高裁が上級の裁判所だから、下級裁判所の裁判官に、政治的に都合のよい結論を命令してよい、ということでもありません。裁判の仕組みの中で上級審が判決を審査することと、裁判官への不当な圧力を分けて考えましょう。
独立していても、法に従って判断する
裁判官は、良心に従い独立して職権を行い、[34]憲法及び法律にのみ拘束されます。
ここで「良心」を、自分が好きか嫌いかで結論を出してよいという意味にしないでください。証拠と法に基づいて判断することが求められます。裁判官が独立していることは、法から自由になることではありません。
行政機関は、裁判官を懲戒することができません。行政に不利な判断をした裁判官を、行政が罰することを認めれば、独立が脅かされるからです。行政機関が終審として裁判を行うことも認められません。
「終審として」という条件に注目してください。行政の内部に不服を審査する仕組みがあることまで、すべて禁止しているわけではありません。最後に裁判所による審査を受ける道を閉ざさないという関係で理解します。
条件を一部だけ取り出して、広く言い切らないことが大切です。ここでも、行政機関は一切の紛争処理をできない、と読み替えないようにしましょう。
家庭裁判所は「特別裁判所」ではない
日本の裁判所には、最高裁判所と下級裁判所があります。下級裁判所の基本の種類は、高等裁判所、地方裁判所、家庭裁判所、簡易裁判所です。
憲法は特別裁判所の設置を禁止しています。これは通常の裁判所の体系から独立した裁判所を設けることを禁止する趣旨です。家庭裁判所のように専門的な事件を扱う裁判所があるから、それだけで憲法違反になるわけではありません。家庭裁判所は、下級裁判所の体系の中に位置付けられています。
裁判所の名前に「家庭」と付いているので、特別な分野を扱う、だから特別裁判所だ、と言葉の印象だけで決めないことが大切です。専門的な事件を担当することと、憲法上禁止される特別裁判所に当たることは別です。
国会・内閣からの不当な介入を防ぐ。
個々の裁判官が、証拠と法に基づいて判断する。
例えば、行政に不利な判決を出したら大臣から処分されるとしたら、裁判官は行政に遠慮してしまうかもしれません。そこで、行政機関から懲戒されない保障を置きます。裁判官を特別扱いするためではなく、裁判を受ける人が公正な判断を得るための仕組みなんですね。
この項目の確認問題(3問)
Q01 司法権の独立
司法権の独立の説明として正しいものはどれですか。
Q01の解答・解説を開く
まず、何から独立するのかを考えましょう。政治的な圧力から独立するのであって、法を無視してよいのではありません。そこで、憲法及び法律に従い、独立して判断すると説明する2が正解です。
1と4は、独立を個人の好みや法からの自由と取り違えています。3のように内閣が結論を命令できれば、行政を相手に争う人は公正な判断を期待できませんね。
Q02 行政機関と裁判
行政機関について、憲法の考え方に合うものはどれですか。
Q02の解答・解説を開く
まず「終審として」という条件に注目しましょう。行政内部に不服を審査する仕組みがあっても、裁判所による審査への道を閉ざしてよいわけではありません。したがって3が正解です。
2は禁じられる範囲を広げすぎています。1は行政機関による裁判官の懲戒を認める点、4は最終判断を行政が独占する点で、司法の独立に反します。
Q03 家庭裁判所の位置付け
家庭裁判所の説明として正しいものはどれですか。
Q03の解答・解説を開く
まず、専門分野を扱うことと、通常の裁判所の体系から独立していることを分けましょう。家庭裁判所は家事事件や少年事件などを扱いますが、下級裁判所の一つです。よって1が正解です。
2は「家庭」という名前の印象から特別裁判所と決めています。3の行政機関でも、4の裁判官の罷免を判断する機関でもありません。
自分の言葉で説明しよう
考え方と解答例を開く
まず、家庭裁判所が通常の裁判所の体系のどこにあるかを確かめましょう。家庭裁判所は下級裁判所の一つです。専門的な事件を扱うことだけで、禁止された特別裁判所になるわけではありません。
解答例は、「家庭裁判所は下級裁判所の一つであり、憲法が設置を禁止する特別裁判所ではない」です。専門分野と制度上の位置を分けられれば、正しく訂正できます。
2.憲法に適合するかを判断する
最高裁が最後に判断することと、独占することは違う
法律などが憲法に反していないかを確かめる仕組みが、[35]違憲審査制です。違憲立法審査制ともいいます。法律、命令、規則、処分が憲法に適合するかを、裁判所が判断します。法律という名称のものだけが対象ではありません。
例えば、ある法律に基づく扱いが不平等だとして、裁判で争われた場合を考えましょう。裁判所は、具体的な争いを解決する際に、適用される法律などが憲法に反しないかを判断します。日本では、具体的事件と関係なく法律の内容だけを抽象的に審査するのが基本、という説明は適切ではありません。
最高裁判所は、この違憲審査について終審裁判所です。しかし、最高裁判所だけに審査の権限があるわけではありません。[36]下級裁判所も違憲審査を行えます。
ここで「終審」と「独占」を分けます。最高裁が最終的な判断を担うことから、ほかの裁判所は一切判断できない、という結論は出ません。
具体的な事件に関連する、下級裁判所も行える、最高裁は終審。この三点をつなげて説明できれば、違憲審査についての基本の取り違えを防げます。
- 具体的な争いが裁判所に持ち込まれる
- その解決に適用する法律・命令・規則・処分などを確認する
- 事件の解決に必要な範囲で、憲法に反しないかを判断する
- 下級裁判所も審査できる。最高裁判所は終審裁判所
法律は国会の多数で作られます。でも、多数決で決まったことなら基本的人権を侵害してもよい、とはいえませんよね。国会の作った法律も憲法の下に置く。そのために、裁判所によるチェックが意味を持つのです。
この項目の確認問題(2問)
Q04 違憲審査の範囲
日本の違憲審査について正しい説明はどれですか。
Q04の解答・解説を開く
最初に、何を解決するための判断かを考えましょう。日本では具体的な事件があり、その解決に必要な範囲で憲法との関係を調べるのが基本です。これを表す4が正解です。
1は命令・規則・処分を外しているため範囲が狭すぎます。2は判断する主体が違います。3は具体的事件との関係を落としている点が誤りです。
Q05 終審と独占
違憲審査を行う裁判所について正しいものはどれですか。
Q05の解答・解説を開く
ここでは「最後に判断する」と「そこだけが判断できる」を分けます。最高裁判所は終審裁判所ですが、下級裁判所も違憲審査を行えます。したがって1です。
2は終審を独占と取り違え、3は最高裁判所の役割を外しています。4は主体を裁判所から内閣に入れ替えているので誤りです。
3.裁判官の任命と罷免
誰が指名し、誰が任命するのか
次は裁判官の任命です。最高裁判所の長官は、内閣が指名し、天皇が任命します。首相を指名するのは国会でした。指名という動詞が同じでも、指名する対象が変わると主体も変わります。
長官以外の最高裁判所の裁判官は、内閣が任命します。下級裁判所の裁判官は、最高裁判所が指名した名簿によって、内閣が任命します。下級裁判所の裁判官の任期は10年で、再任が可能です。
内閣が任命に関わるのなら、裁判官は内閣の命令通りに判決を出すのでしょうか。そうではありません。任命に関わることと、個々の裁判の結論を指示できることは別です。裁判官は、憲法及び法律にのみ拘束され、独立して職権を行います。
首相の指名と任命、そして最高裁長官の指名と任命を比べてみましょう。国会が首相を指名、内閣が最高裁長官を指名。いずれも天皇が任命します。
表の機関名をただ読むより、誰を、誰が指名し、誰が任命するかという文にすると、入れ替えに気づけるようになります。
独立の保障と、責任を問う手続
最高裁判所の裁判官には、[37]国民審査という仕組みがあります。国民が最高裁判所の裁判官を審査します。任命後初めて行われる衆議院総選挙の際に審査し、その後10年を経過した後、初めて行われる衆議院総選挙の際に再び審査します。
下級裁判所の裁判官まで、全員が国民審査の対象になるわけではありません。また、国民が法律の合憲性を審査する制度でもありません。違憲審査と国民審査は、どちらにも審査という語がありますが、主体も対象も違います。
もう一つ、[38]弾劾裁判所を確認しましょう。両議院の議員で構成され、国会に設けられます。裁判官が職務上の義務に著しく違反した場合などに、罷免するかどうかを判断します。最高裁判所の中に設けられる機関ではありません。
弾劾裁判は、裁判官に刑罰を科す刑事裁判とは別です。身分を失わせることと、犯罪に対して刑罰を科すことは異なります。また、心身の故障による罷免は裁判によります。
司法の独立は、どんな場合にも一切責任を問われないという意味ではありません。独立を保障しながら、憲法や法律に定める手続で身分について判断する仕組みが設けられています。
内閣が指名 → 天皇が任命。国民審査の対象。
内閣が任命。国民審査の対象。
最高裁判所が指名した名簿 → 内閣が任命。任期10年、再任可能。国民審査の対象ではない。
国民審査の「10年」と、下級裁判所の裁判官の「任期10年」は、同じ数字でも別の話です。前者は最高裁判所の裁判官を再び審査する時期、後者は下級裁判所の裁判官の任期です。国民審査が、10年ごとの決まった日に必ず行われるわけでもありません。その後の最初の衆議院総選挙と結びつけて理解しましょう。
この項目の確認問題(4問)
Q06 最高裁長官の選び方
最高裁判所の長官は、どのように選ばれますか。
Q06の解答・解説を開く
まず、選ばれる人が首相なのか最高裁長官なのかを確認しましょう。首相を指名するのは国会、最高裁長官を指名するのは内閣です。どちらも天皇が任命します。今回は最高裁長官なので2が正解です。
1は首相の選び方です。3の国会による任命、4の直接選挙も、最高裁長官の選び方ではありません。
Q07 国民審査
国民審査の対象は何ですか。
Q07の解答・解説を開く
「誰を審査するか」を先に押さえましょう。国民審査で対象になるのは最高裁判所の裁判官です。したがって3です。
1は違憲審査の対象と混ざっています。2の下級裁判所の裁判官は国民審査の対象ではありません。4は検察審査会が審査するものです。「審査」という共通の言葉だけで判断しないことが大切ですね。
Q08 弾劾裁判所
裁判官の弾劾裁判所について正しいものはどれですか。
Q08の解答・解説を開く
まず、何を決める機関かを確認します。弾劾裁判所は、職務上の義務への著しい違反などを理由に、裁判官を罷免するかを判断します。次に構成と場所を確認すると、両議院の議員で構成され、国会に置かれます。よって4です。
1と2は場所が違います。3は、裁判官の身分を失わせることと、犯罪への刑罰を取り違えています。
Q09 下級裁判所の裁判官
下級裁判所の裁判官について正しいものはどれですか。
Q09の解答・解説を開く
「名簿」「任命」「任期」を順に確認しましょう。名簿を指名するのは最高裁判所、それにより任命するのは内閣、任期は10年で再任可能です。三つがそろっている1が正解です。
2は機関を入れ替えています。3は再任できる点を落としています。4の国民審査は最高裁判所の裁判官が対象で、下級裁判所の再任の制度ではありません。
自分の言葉で説明しよう
考え方と解答例を開く
最初に、任命と裁判の判断という二つの場面を分けます。内閣が任命に関わるからといって、任命後の判決を命令する権限まで生じるわけではありません。
解答例は、「裁判官の任命に関与する権限と、個々の裁判の結論を指示する権限は別であり、裁判官は憲法及び法律にのみ拘束され、独立して職権を行うから」です。任命する人の意向に従う部下、というイメージを当てはめないことが大切ですね。
4.争いの種類を区別する
何の判断を求める裁判なのか
[39]民事裁判は、私人間の権利義務をめぐる争いを扱います。例えば、お金を貸した人と借りた人の間で、返済をめぐる争いが生じた場合です。
[40]刑事裁判は、犯罪が成立するか、成立するならどのような刑罰を科すかを判断します。犯罪を被害者と加害者の単なるお金の争いとして扱うのではなく、国家の刑罰権の行使に関わる手続です。
行政処分の取消しなどを求める行政事件の裁判もあります。行政が関わる争いだから行政機関だけで最終的に決める、ということではなく、通常の裁判所が扱います。
同じ出来事から、刑事と民事の両方の問題が生じることもあります。例えば傷害事件で、犯罪に対する刑罰と、被害者への損害賠償は別の問いです。「刑事か民事か」を、登場人物だけでなく、何の判断を求めているかで区別してください。
裁判の種類を整理する目的は、名称を三つ言うことではありません。今扱っている手続が、どのような問題を解決しようとしているかを捉えるためです。
貸したお金を返してほしい。けがの治療費などを賠償してほしい。
犯罪が成立するか。有罪ならどの刑罰を科すか。
行政の処分に違法な点はないか。処分を取り消すべきか。
「相手にお金を払わせる」という言い方だけでも区別できません。被害者への損害賠償と、刑罰として国に納める罰金は役割が違います。誰に、何のために支払うのかまで確認すると、民事と刑事を取り違えにくくなります。
この項目の確認問題(2問)
Q10 民事と刑事
傷害事件について、正しい説明はどれですか。
Q10の解答・解説を開く
同じ出来事でも、何を求めるかで手続が変わります。犯罪に対して刑罰を科すかは刑事、治療費などの損害を賠償してもらうかは民事です。そこで2が正解です。
1は二つの問いを同一にしています。3は登場人物だけで分類している点、4は刑事の判断で民事の問題まで消えるとしている点が誤りです。
Q11 行政事件の裁判
行政処分の取消しを求める裁判について正しいものはどれですか。
Q11の解答・解説を開く
まず、行政が争いの相手だからこそ、公正な司法の判断を受けられることが大切だと考えましょう。行政処分の取消しなどを求める裁判も、通常の裁判所が扱います。よって3です。
1は行政を最終判断者にする点で誤りです。2の弾劾裁判所は裁判官の罷免を扱う機関です。4のように裁判そのものが禁止されるわけではありません。
5.誤りを正す機会
控訴と上告を、段階で見分けよう
次は[41]三審制です。同じ事件について、原則として段階を変えて3回の裁判を受けられる仕組みです。誤りを正す機会を設ける意味がありますが、事件があれば自動的に3回裁判をするわけではありません。
第一審の判決に対する上級審への不服申立てが[42]控訴、第二審の判決に対するものが[43]上告です。音が似ているので、矢印の位置と一緒に覚えます。
基本例は、地方裁判所が第一審、高等裁判所が第二審、最高裁判所が第三審。地方から高等へ進む不服申立てが控訴、高等から最高へ進む不服申立てが上告ですね。
ただし、すべての事件がこの経路というわけではありません。簡易裁判所から始まる民事事件の基本例では、第二審が地方裁判所、第三審が高等裁判所です。事件の種類や申立ての内容で例外もあります。
図の名称だけを暗記するより、第一審、第二審、第三審という位置を先に読みましょう。初めて見る手続図でも、どの段階に不服を申し立てているかが分かれば、控訴と上告を対応させられます。
確定した判決を見直す特別な手続
判決が確定した後にも、[44]再審という特別な手続があります。例えば、有罪判決が確定した後に、無罪を示す新たな明白な証拠が発見された場合など、法律の定める理由に基づいて裁判をやり直す特別な手続です。
控訴や上告と違うのは、ここでは判決が確定した後の例を扱っていることです。三審制だから四回目の裁判はどんな場合でも一切認められない、と考えてはいけません。通常の上訴と、確定判決に対する再審を区別します。
- 第一審:地方裁判所
- 控訴 → 第二審:高等裁判所
- 上告 → 第三審:最高裁判所
- 第一審:簡易裁判所
- 控訴 → 第二審:地方裁判所
- 上告 → 第三審:高等裁判所
二つ目の例では、地方裁判所に向かうのに「控訴」です。控訴は「高等裁判所に行くこと」という名前ではないからですね。第一審から第二審へ、という段階で判断します。
どの事件も必ずこの図どおりになるわけではなく、事件の種類や不服申立ての内容による例外があります。再審も、希望すれば誰でも通常の四回目の裁判を受けられるという制度ではありません。確定した判決を見直すため、法律の定める理由が必要です。
この項目の確認問題(3問)
Q12 控訴と上告
第一審の判決に対する不服申立て、第二審の判決に対する不服申立ての順に正しい組合せはどれですか。
Q12の解答・解説を開く
最初に裁判所の名前を考えるのではなく、何審から次へ進むのかを確認しましょう。第一審から第二審へは控訴、第二審から第三審へは上告です。したがって4です。
1は順序が逆です。2と3にある再審は、確定した判決を法定の理由で見直す特別な手続で、通常の上訴の名前には入りません。
Q13 三審制の経路
簡易裁判所から始まる民事事件の基本例として正しい順番はどれですか。
Q13の解答・解説を開く
この問題では「簡易裁判所から始まる民事事件」という条件を先に読みます。基本例では、第一審が簡易裁判所、第二審が地方裁判所、第三審が高等裁判所です。よって1です。
2は家庭裁判所を挟む点、3は順序、4は第一審の裁判所が誤っています。すべてを地方・高等・最高の一本に当てはめず、事件の種類を確かめましょう。
Q14 再審
再審の説明として正しいものはどれですか。
Q14の解答・解説を開く
ここでは「判決が確定した後」と「法律の定める理由」の二点を探します。両方を含む2が正解です。
1は理由が必要な点を落とし、3は控訴と取り違えています。4のように自動的に始まるものでもありません。三審制の通常の流れと、確定判決を見直す特別な手続を分けて考えましょう。
6.公開と被告人の権利
公開の原則と無罪の推定
裁判の対審と判決は公開が原則です。外から裁判の過程を確かめられることが、公正さを支えます。対審を非公開にすることには憲法上の要件があり、判決は公開されます。
また、刑事裁判では無罪の推定が重要です。起訴されたというだけで、有罪と決まるわけではありません。犯罪が証明されたかを、裁判の手続を通じて判断します。
後で検察審査会を学ぶときも、この点が役立ちます。裁判を始める判断と、証拠を調べて有罪・無罪を決める判断は別です。段階を一つ飛ばして結論を出さないようにしてください。
拘禁刑と、資料を読む時点
2025年6月1日、懲役と禁錮に代わる[45]拘禁刑が導入されました。個々の受刑者の特性に応じた処遇を行い、改善更生と社会復帰を図ることが目的です。
ここは、古い問題集や統計を読むときに注意が必要です。懲役や禁錮という言葉が古い資料に出てきても、直ちに誤りだと決めつけないでください。いつの制度や行為を対象にしているかを確認します。施行前の行為等に関する経過措置もあります。
共通テストの資料読解では、制度を知っていることに加え、時点をそろえることが大切です。過去の人数を示す表と、現在の制度の説明は、そのまま同じ条件で比較できるとは限りません。
今日は刑罰の細かい分類を増やすより、現行制度では拘禁刑という名称を使うこと、そして古い資料は対象時点を確認することを押さえます。当時の制度と現在の制度を分けて読めば、名称の違いにも戸惑わずに済みます。
裁判所に刑事事件の判断を求める。まだ有罪が決まったわけではない。
証拠を調べ、犯罪が証明されたかを判断する。
有罪の判断を経て、法に基づいて刑を執行する。
無罪の推定は、「何があっても無罪になる」という意味ではありません。有罪を証明する責任は検察側にあり、証明されないまま処罰してはいけないということです。報道で名前を見たことや、起訴されたという事実だけで結論を決めないようにしましょう。
この項目の確認問題(2問)
Q15 公開と無罪の推定
刑事裁判について正しいものはどれですか。
Q15の解答・解説を開く
まず、起訴は裁判を求める段階であり、有罪の確定ではないと押さえます。その後、証拠を調べて判断するので3が正解です。
1は起訴と判決を飛び越えてつないでいます。公開については、対審と判決の公開が原則です。判決を非公開とする2、対審を無条件で非公開にできるとする4も誤りです。
Q16 拘禁刑
2025年6月1日に導入された刑と、古い資料の読み方について正しいものはどれですか。
Q16の解答・解説を開く
まず、2025年6月1日に懲役と禁錮に代わって拘禁刑が導入されたことを確認します。次に、資料がいつの制度を述べているかを見ます。この二つを押さえている4が正解です。
1は新旧を逆にしています。2は資料の時点を無視しています。3も、個々の受刑者に応じた処遇で改善更生と社会復帰を図る目的を落としています。
7.裁判員と検察審査会
裁判員は有罪・無罪と刑を考える
ここからは、[46]裁判員制度を見ていきましょう。国民が裁判官と一緒に、重大な刑事事件の第一審に参加する仕組みです。原則として裁判官3人と裁判員6人で審理します。
裁判員は、有罪か無罪かという判断だけでなく、有罪の場合の刑を決める判断にも参加します。事実を認定することや量刑について、裁判官と話し合います。
対象は、地方裁判所で扱う所定の重大な刑事事件の第一審です。民事事件に参加するわけではなく、控訴審や上告審でも同じ裁判員が参加する、という制度でもありません。どの事件のどの段階かを確認しましょう。
裁判員には、評議の秘密や職務上知った秘密を守る義務があります。この義務は任務が終わった後も続きます。ただし、経験の感想を含め何も話せない、という意味に広げないようにします。何が秘密として保護されるかを区別する必要があります。
「裁判員が裁判官を置き換える」とも考えないでください。裁判官とともに審理し、話し合う市民参加の制度です。
過半数だけでなく、賛成者の内訳を確かめよう
裁判員裁判で有罪とするには、裁判官と裁判員の双方の賛成を含む過半数が必要です。人数だけでなく、どの立場の人が賛成しているかという条件があります。
原則の9人構成を使って考えます。裁判員6人は有罪、裁判官3人は無罪と考えました。有罪という意見が6人で過半数を超えています。この場合、有罪とすることができるでしょうか。
できません。裁判官の賛成が含まれていないからです。裁判員だけの賛成では、被告人に不利な有罪の判断をすることはできません。
一方、裁判官1人と裁判員4人が有罪に賛成した場合は、合計5人で過半数となり、双方の賛成も含むので、この人数条件を満たします。
国会の人数問題では、分母と割合を確かめました。ここでは、それに構成の条件が加わります。5人以上という数だけを覚えるより、「双方を含む過半数」という言葉をそのまま具体例に当てはめることが大切です。
検察審査会は「不起訴」を審査する
もう一つの市民参加の仕組みが、[47]検察審査会です。検察官が不起訴にした判断が適切かどうかを、国民から選ばれた11人で審査します。ここで、[48]起訴という言葉を整理しましょう。刑事事件について裁判所に判断を求め、公訴を提起することです。
不起訴とは、検察官が起訴しないことです。裁判で無罪判決が出たことと同じではありません。裁判を始める前の段階の判断に、国民の視点を取り入れるのが検察審査会です。
ここで裁判員制度と比べます。裁判員は、すでに起訴された対象事件の第一審で、有罪・無罪や刑を判断します。検察審査会は、不起訴処分の当否を審査し、起訴すべきかを考えます。
どちらも国民が刑事司法に参加する制度ですが、11人か6人かという数の違いより先に、段階と判断内容の違いを押さえましょう。検察審査会が有罪や刑を決める、という文は、この基本を混同しています。
「誰が、何を、いつ判断するか」を短い文で言えるようにすると、資料の手続が複雑になっても現在地を見失いにくくなります。
過半数だが、裁判官の賛成がない。有罪とする条件を満たさない。
9人の過半数で、双方の賛成を含む。人数・構成の条件を満たす。
双方の賛成はあるが、過半数に届かない。条件を満たさない。
9人の半分は4.5人です。過半数には最低5人が必要ですね。まず合計人数を数え、次に裁判官と裁判員の両方が含まれるかを見る。この順番で確認しましょう。数字だけでは、条件の半分しか確認できていません。
起訴された対象刑事事件の第一審。原則、裁判官3人と裁判員6人で有罪・無罪や刑を判断する。
検察官による不起訴処分の後。国民から選ばれた11人が、不起訴の当否を審査する。
この項目の確認問題(5問)
Q17 裁判員の役割
裁判員制度の説明として正しいものはどれですか。
Q17の解答・解説を開く
「事件の種類」「段階」「判断内容」の順に確認します。重大な刑事事件、地方裁判所での第一審、有罪・無罪と有罪の場合の刑です。これを表す1が正解です。
2は民事に広げ、3は上訴審に広げている点が誤りです。4の不起訴処分の審査は、検察審査会の仕事ですね。
Q18 人数計算①
裁判官3人・裁判員6人の構成で、裁判員6人だけが有罪に賛成しました。有罪とする人数・構成の条件を満たしますか。
Q18の解答・解説を開く
最初に合計を数えると、賛成は6人で9人の過半数です。でも、ここで確認を終えてはいけません。次に内訳を見ると、裁判官の賛成は0人です。双方の賛成を含む条件を満たさないため、2が正解です。
1は内訳を見落としています。3の全員一致は必要ありません。4のように裁判員の意見を除く制度でもありません。
Q19 人数計算②
同じ9人構成で、有罪とする人数・構成の条件を満たす賛成者の組合せはどれですか。
Q19の解答・解説を開く
まず、9人の過半数は5人以上です。1と4は合計4人なので届きません。2は合計6人ですが、裁判官の賛成がありません。
3は1+4=5人で過半数となり、裁判官と裁判員の両方を含みます。したがって3です。「合計を数える、内訳を見る」という二段階で判断すると、正解にたどり着けますね。
Q20 検察審査会の仕事
検察審査会について正しいものはどれですか。
Q20の解答・解説を開く
まず、審査の対象を確認します。検察審査会が扱うのは「検察官が起訴しなかった判断」です。国民から選ばれた11人で、その判断が適切かを考えるので4が正解です。
1は裁判員制度、2は国民審査です。3は不起訴と無罪判決を同じにしています。不起訴は裁判での無罪の判断ではありません。
Q21 守秘義務
裁判員の守秘義務について正しいものはどれですか。
Q21の解答・解説を開く
まず、守る対象は評議の秘密や職務上知った秘密だと確認します。そして、その義務は任務終了後も続きます。したがって1が正解です。
2と4は秘密を自由に明かせるとしている点が誤りです。一方、3は話せない範囲を広げすぎています。秘密に触れない経験の感想まで、すべて禁止されるわけではありません。
自分の言葉で説明しよう
考え方と解答例を開く
まず、裁判が始まっているかに注目します。裁判員が参加する事件はすでに起訴されています。一方、検察審査会は検察官が不起訴にした判断を審査します。
次に、何を決めるかを加えます。解答例は、「裁判員制度は、起訴された所定の重大な刑事事件の第一審で、裁判官とともに有罪・無罪や刑を判断する制度である。検察審査会は、検察官による不起訴処分の当否を国民から選ばれた11人が審査する制度である」です。人数だけでなく、手続の現在地を説明できましたね。
8.検察審査会の二段階の審査
起訴相当から、再検討、起訴議決へ
検察審査会には、強制起訴につながる仕組みがあります。第一段階で、11人中8人以上が起訴相当と議決すると、検察官は再検討します。最初の起訴相当議決だけで、直ちに強制起訴になるわけではありません。
検察官が再び不起訴にするなど、法律で定める場合には第二段階へ進みます。そこで8人以上による起訴議決があれば、裁判所が指定した弁護士が起訴します。
ここでは、再び不起訴になった場合の経路に注目します。実際の制度には、一定期間内に検察官から処分の通知がない場合などの規定もあります。図に書かれた条件を使い、図が制度のすべてを表していると思い込まないようにします。
例えば、第一段階で8人が起訴相当、第二段階では7人が起訴議決に賛成した場合、第二段階の8人以上という条件を満たしません。二段階の人数を足すこともできません。
そして、起訴になっても、そのことだけで有罪が確定するわけではありません。裁判所で証拠を調べ、犯罪が証明されたかを判断します。起訴、審理、判決という順番を守って読みましょう。
- 検察官が不起訴処分にする
- 第一段階:11人中8人以上で「起訴相当」
- 検察官が再検討する
- 再び不起訴 → 第二段階の審査
- 11人中8人以上で「起訴議決」
- 裁判所が指定した弁護士が起訴する
- 裁判所が審理する。起訴されたことだけで有罪とはならない
裁判所 → 法律などが憲法に適合するか。
国民 → 最高裁判所の裁判官。
国民から選ばれた11人 → 検察官の不起訴処分の当否。
この項目の確認問題(4問)
Q22 第一段階の効果
11人中8人以上が第一段階で「起訴相当」と議決すると、どうなりますか。
Q22の解答・解説を開く
手続を一つずつ追いましょう。第一段階で起訴相当となると、まず検察官が再検討します。したがって2です。
1と3は起訴前の段階から有罪や刑の判断へ飛んでいます。4も、第二段階の審査と起訴議決を飛ばしています。「最初の8人で直ちに強制起訴」と覚えないことが大切です。
Q23 二段階の人数
第一段階で8人が起訴相当に賛成し、検察官が再び不起訴にしました。第二段階では7人が起訴議決に賛成しました。正しい判断はどれですか。
Q23の解答・解説を開く
まず、人数の条件を各段階で別々に確かめます。第一段階の8人は満たしていますね。しかし第二段階にも8人以上が必要で、7人では届きません。よって3です。
1のように異なる段階の人数は足せません。2は第二段階の条件を省いています。4は「過半数」と「8人以上」を取り違えています。
Q24 起訴議決の後
第二段階で8人以上の起訴議決があった後の説明として正しいものはどれですか。
Q24の解答・解説を開く
次に動くのは誰かを確認しましょう。起訴議決を受けて、裁判所が指定した弁護士が起訴します。そして裁判所で審理して判断するので、4が正解です。
1は起訴を求める判断と有罪の判断を混同しています。2の内閣による命令は司法の独立に反します。3の国民審査も、対象が最高裁判所の裁判官なので別の制度です。
Q25 テキストの確認問題 E3
日本の司法制度について、正しい説明はどれか。
Q25の解答・解説を開く
まず1を見ましょう。内閣は行政機関です。行政が判決への不満で裁判官を懲戒できれば、独立が脅かされますね。行政機関は裁判官を懲戒できないので、1は誤りです。
次に2です。「最高裁判所に限って」という範囲を確かめます。下級裁判所も違憲審査を行えるので、ここを「下級裁判所も行える」と直す必要があります。
3は「民事事件を含むすべて」が広すぎます。裁判員が参加するのは、所定の重大な刑事事件の第一審です。民事事件や上訴審まで広げないようにしましょう。
最後に4です。検察審査会の対象は、検察官の不起訴処分の当否でした。主体と対象が正しく結び付いているので、正解は4です。名前を覚えるだけでなく、誰が何を判断するのかを確かめると、各選択肢を説明して選べますね。
自分の言葉で説明しよう
考え方と解答例を開く
まず、第一段階の効果を確認します。8人以上で起訴相当となったら、検察官が再検討します。再び不起訴となるなど法定の場合に第二段階に進み、そこで8人以上の起訴議決があると、指定弁護士による起訴につながります。
解答例は、「第一段階の起訴相当議決は検察官の再検討につながり、それだけで直ちに強制起訴となるわけではない。また、起訴は裁判を求めることであり、有罪かどうかはその後の裁判で判断されるため」です。再検討と裁判での判断を飛ばさない説明になっています。
今回のまとめ
司法の独立は、公正な裁判を受けるための土台でした。裁判官は独立していても、憲法及び法律に従って判断します。違憲審査では、具体的事件に関連して下級裁判所も審査でき、最高裁判所が終審となります。
裁判員は起訴後の裁判に参加し、検察審査会は不起訴処分を審査します。裁判員の評決では人数と内訳、検察審査会では各段階の人数と次の手続を確認しました。起訴されたから有罪、任命したから命令できる、と途中を飛ばさず、制度のつながりを説明できるようにしていきましょう。
