共テ公共・政経ゼロから8割講座 / 第3章・第9講
国会の役割
今回は、国会の役割を学んでいきましょう。国会は何を決めるところなのか、なぜ衆議院と参議院の二つがあるのか。「学費支援の制度を作る」といった具体例から、一つずつ考えていきます。
目指すのは、用語や数字を覚えるだけでなく、「誰が何をするのか」「なぜその人数が必要なのか」を説明できるようになることです。国会と内閣の仕事の違い、議決に必要な人数、両院の結論が分かれたときの手続を、順番に整理していきましょう。
読みたい項目だけ開けます。初めて学ぶときは1から順に読み、各項目の確認問題で理解を確かめていきましょう。
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各項目の解説に続けて、確認問題と記述問題を配置しています。問題の欄を開き、その場で復習していきましょう。
選択問題は、答えを選んで「答え合わせ」を押すと、正誤と解説が表示されます。「もう一度解く」で再挑戦できます。
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1.権力を分けて相互に抑制する
「ルールを作る人」が、裁判まで自由にできたら?
まず、少し想像してみてください。ある権力者が、「私を批判した人は処罰します」というルールを作ったとします。しかも、その人が警察も動かし、裁判の結論まで決められるとしたら、どうでしょうか。
「そんなルールはおかしい」と訴えても、判断するのは同じ権力者です。これでは、国民の自由を守るのは難しいですよね。
そこで、国家の権力を立法・行政・司法に分け、互いに行き過ぎを抑える仕組みを設けます。これが[1]三権分立です。
大切なのは、仕事を三つに分けることだけではありません。一か所に権力が集中して、好き勝手に使われるのを防ぐこと。そして、私たちの自由や権利を守ることが目的なんです。
学費支援の制度で、三つの役割を考えよう
例えば、新しく学費を支援する制度を作るとしましょう。制度の基本的なルールを法律で定めるのが国会です。その法律や予算に基づいて、行政機関を通じて事業を進めるのが内閣です。
では、「自分は支援を受けられるはずなのに、対象から外された」という争いが起きたらどうでしょう。裁判になれば、具体的な事実に法を当てはめて判断するのは裁判所です。このように、法律を定める、政策を実施する、争いを判断する、という役割を分けているんですね。
社会の基本的なルールである法律を定める。
例:学費支援の制度を法律で定める。法律や予算に基づき、政策を実施する。
例:行政機関を通じて支援事業を運営する。具体的な争いに法を適用し、判断する。
例:支援を受けられないという争いを裁判で審理する。相互の抑制の例:国会は国政調査などで行政を監視し、裁判所は具体的な事件を通じて法律や行政の行為が憲法に適合するかを審査します。
三つの役割を示す図です。各機関の権限をすべて列挙したものではありません。「国権の最高機関」なら、何でも命令できる?
ここで、少し引っかかりやすい言葉を確認しましょう。憲法41条は、国会を「国権の最高機関」、そして「国の唯一の立法機関」と定めています。
「最高機関」と聞くと、「国会が一番上にいて、内閣や裁判所に何でも命令できるのかな」と思うかもしれません。でも、そういう意味ではありません。
国会は、国民の代表が集まり、国の意思決定の中心を担う機関です。ただし、裁判所に「この人を有罪にしなさい」と命令することはできません。裁判官は、憲法と法律に従い、独立して判断します。
国会が一般的なルールを法律で定めることと、個々の事件の判決を指示することは違う。この区別を押さえておきましょう。
法律案の提出と、法律の成立を分けよう
では、国会が唯一の立法機関なら、内閣は法律案を出せないのでしょうか。実は、内閣も提出できます。
法律案は、あくまで「こんな法律を作りませんか」という提案です。提出しただけで法律になるわけではなく、成立には国会の議決が必要です。提案することと、法律として決定することを分ければ、矛盾しませんね。
地元で選ばれた議員は、誰の代表?
もう一つ、代表する範囲も確認しましょう。国会議員は[2]全国民を代表します。
例えば、大阪の選挙区で選ばれた議員でも、大阪の利益だけを優先する代理人ではありません。もちろん、地元の声を聞くことは大切です。そのうえで、日本全体にどのような影響があるかを考えて判断する立場なんです。
ここまでのポイントは、権力を分けて国民の自由を守る、ということです。国会が最高機関であっても、裁判の結論まで命令できるわけではない。この関係を覚えておきましょう。
この項目の確認問題(3問)
Q01 三権分立の目的
三権分立の説明として、最も適切なものを選ぼう。
Q01の解答・解説を開く
正解:2
- 1:裁判所は国会の指示で判決を決めるわけではありません。
- 2:権力の集中・濫用を防ぐ目的と、相互の抑制を押さえます。
- 3:立法・行政・司法を、それぞれ担う機関に分けます。
- 4:単なる効率的な分業ではなく、権力の濫用を防ぐ点が重要です。
Q02 最高機関の意味
国会が国権の最高機関であることから、正しくいえることはどれ?
Q02の解答・解説を開く
正解:4
- 1:司法の独立に反する理解です。
- 2:内閣も提出できます。提出と法律の成立は異なります。
- 3:国会も憲法に拘束されます。
- 4:最高機関という地位は、他の機関への無制限な指揮権を意味しません。
Q03 国会議員が代表する人
ある選挙区で選ばれた国会議員は、憲法上、誰を代表する?
Q03の解答・解説を開く
正解:1
- 1:選挙区の声を聞きつつ、全国民を代表する立場で判断します。
- 2:選挙区だけの代理人ではありません。
- 3:支持者だけに代表の範囲を限定しません。
- 4:所属政党の党員だけを代表するのではありません。
2.二つの議院で審議する
なぜ、一つの議院で決めないの?
次は、国会の中の仕組みに進みましょう。日本の国会は、衆議院と参議院という二つの議院からできています。この仕組みが[3]二院制です。
「同じことを二回話し合うなら、一つで決めたほうが早いのでは?」と思いませんか。確かに、速さだけを考えれば、そういう面もあります。
ただ、一方の議院が見落とした問題に、もう一方の議院が気づくかもしれません。別の視点から、もう一度検討できるところに意味があります。
一方の議院では、「多くの学生が助かるから、よい制度だ」と評価したとします。ところが、もう一方の議院では、「対象から外れる家庭との公平性はどうなるの?」「必要なお金は確保できるの?」という疑問が出るかもしれません。
制度のよい面だけでなく、問題点も確かめられる。二院制には、こうした役割があるんです。
その一方で、両院の意見が分かれれば、決定に時間がかかります。慎重に話し合えるという利点と、意思決定が遅れる可能性の両方を押さえてください。
衆議院と参議院は、何が違う?
まず、衆議院議員の任期は[4]4年です。ただし、必ず4年間続けられるわけではありません。途中で衆議院が解散されれば、その時点で任期は終了します。
一方、参議院議員の任期は[5]6年で、解散はありません。そして、3年ごとに半数を改選します。ここは、「3年ごとに選挙があるから、任期も3年」と取り違えないようにしましょう。
| 議院 | 任期・改選 | 解散 | 制度の特徴 |
|---|---|---|---|
| 衆議院 | 任期4年。解散で途中終了することがある。 | ある | 短い任期と解散により、最近の民意を反映しやすい。 |
| 参議院 | 任期6年。3年ごとに半数改選。 | ない | 議員が一度に全員交代せず、継続性や長期的な視点を確保する。 |
「半数改選」を、二つの組に分けて考えよう
参議院の議員を、説明のためにA組とB組に分けてみます。ある選挙ではA組を改選し、その3年後にはB組を改選します。さらに3年後、最初の選挙から6年がたったところで、A組を改選するわけです。
こうすれば、A組を改選するときにもB組は残っています。議員が一度に全員交代しないので、国会の活動の継続性を保ちやすいんですね。なお、A組とB組は説明のための呼び方で、政党を分けているわけではありません。
- ある選挙:A組を改選
B組は任期の途中なので在職する。 - 3年後:B組を改選
A組は任期の途中なので在職する。 - さらに3年後:A組を改選
A組の任期6年が満了。B組は在職する。
民意を反映するのは、衆議院だけ?
衆議院は、任期が短く解散もあるので、最近の民意を反映しやすいと説明されます。でも、それは「参議院は民意を反映しない」という意味ではありません。どちらも、選挙で選ばれた全国民の代表で構成されています。
また、「衆議院が与党で、参議院が野党」という分け方でもありません。与党・野党は政権との関係による政党の区分です。衆議院・参議院という議院の区分とは、別の話なんです。
衆議院は4年で解散あり。参議院は6年で、3年ごとに半数改選、解散なし。数字だけでなく、その違いがどんな役割につながるのかも、合わせて整理しましょう。
この項目の確認問題(3問)
Q04 二院制の利点と課題
二院制の説明として正しいものは?
Q04の解答・解説を開く
正解:3
- 1:意見が分かれると決定が遅れることがあります。
- 2:参議院も審議・議決を行います。
- 3:多様な視点と意思決定の速さの両面から理解します。
- 4:与党・野党という政党の区分と議院の区分は異なります。
Q05 任期と半数改選
参議院議員の任期・改選として正しい組合せは?
Q05の解答・解説を開く
正解:2
- 1:3年は半数改選の間隔です。任期は6年です。
- 2:解散がなく、半数ずつ改選するため継続性が保たれます。
- 3:衆議院の任期と解散の説明です。
- 4:参議院には解散がありません。
Q06 民意の反映
衆議院と参議院の関係について正しいものは?
Q06の解答・解説を開く
正解:1
- 1:制度の違いはあっても、両院とも全国民を代表します。
- 2:参議院も選挙で議員が選ばれます。
- 3:解散の場合は任期満了前に終了します。
- 4:任期・解散・改選の仕組みに違いがあります。
3.国会の種類と、解散中の緊急対応
国会の種類は、開くきっかけで分けよう
続いて、国会をいつ開くのかを見ていきましょう。常会、臨時会、特別会という三つの名前が出てきますが、開くきっかけに注目すると区別しやすくなります。
毎年1回召集されるのが[6]常会です。通常国会とも呼ばれ、通常は1月に召集されます。会期、つまり国会が活動する期間は原則150日です。ただし、必要に応じて延長されることもあります。
では、国会が閉じている間に、大きな災害などで新たな対策を議論する必要が出てきたらどうでしょう。「次の通常国会まで何もできない」では困りますよね。そこで、必要に応じて開くのが[7]臨時会、臨時国会です。
臨時会を求める条件は、誰の4分の1?
臨時会は内閣が召集を決定できます。それに加えて、いずれかの議院の総議員の4分の1以上が要求した場合、内閣は召集を決定しなければなりません。
例えば、ある議院の総議員が300人なら、4分の1は75人です。その議院で75人以上が要求すれば、条件を満たします。
ここで、「いずれかの議院」という言葉が大事です。両方の議院で要求をそろえる必要はありません。また、分母は出席している議員ではなく、総議員です。この二つをセットで押さえましょう。
特別会は、解散総選挙の後
三つ目は[8]特別会です。特別国会とも呼ばれます。「特別に重要な議題を扱う国会」という意味ではありません。衆議院の解散による総選挙の後に開く国会のことです。
順番は、衆議院を解散し、解散の日から40日以内に総選挙を行い、その選挙の日から30日以内に国会を召集する、となります。40日は解散の日から、30日は選挙の日から数える。この起点の違いも確認してください。
- 衆議院を解散
この日が最初の期限の起点。 - 解散の日から40日以内に総選挙
新しい衆議院議員を選ぶ。 - 選挙の日から30日以内に国会を召集
特別会を開く。
参議院選挙や、衆議院の任期満了による総選挙の後まで、特別会と呼ぶわけではありません。これらの選挙後には、国会法の定める例外を除き、臨時会を召集します。「選挙の後だから全部特別会」としないことが大切です。
衆議院が不在の間に、緊急の対応が必要になったら?
衆議院が解散されると、参議院も同時に閉会します。ただし、参議院まで解散されるのではありません。参議院議員は、そのまま在職しています。
この間、国に緊急の必要が生じたときは、内閣が参議院の緊急集会を求めることができます。衆議院が不在の間に、参議院が緊急の対応を担うんですね。
とはいえ、衆議院が関わらないまま決めた措置を、そのままずっと続けてよいとは限りません。緊急集会で採られた措置は臨時のもので、次の国会開会後10日以内に衆議院の同意がなければ、効力を失います。
この10日は、解散の日からでも、緊急集会の日からでもありません。「次の国会が開会した後」という言葉まで含めて覚えておきましょう。
召集を決める内閣と、国事行為を行う天皇
最後に、召集の主体も整理します。召集を決定するのは内閣です。そして、国事行為として召集を行うのは天皇です。天皇は内閣の助言と承認により行うので、自分の政治判断で国会を開くわけではありません。
常会は毎年1回、原則150日。臨時会の要求は、いずれかの議院の総議員の4分の1以上。特別会は解散総選挙後です。日数を覚えるときは、何の日から数えるのかも一緒に確認しましょう。
この項目の確認問題(4問)
Q07 国会の種類
常会について正しい説明は?
Q07の解答・解説を開く
正解:4
- 1:解散総選挙後に開くのは特別会です。
- 2:常会の会期は原則150日です。
- 3:毎年1回です。
- 4:通常国会とも呼ばれます。会期の延長はあり得ます。
Q08 臨時会の要求
ある議院の総議員が300人とする。憲法53条の臨時会召集要求について正しいものは?
Q08の解答・解説を開く
正解:3
- 1:いずれか一方の議院の総議員の4分の1以上で足ります。
- 2:分母は総議員です。
- 3:300×1/4=75。要求の要件を満たす場合、内閣には召集決定の義務があります。
- 4:条件を満たす要求があれば、召集を決定しなければなりません。
Q09 解散後の日程
解散から特別会までの期限として正しいものは?
Q09の解答・解説を開く
正解:2
- 1:40日と30日が逆です。
- 2:それぞれの期限の起点も確認しましょう。
- 3:この日数ではありません。解散から40日、選挙から30日です。
- 4:特別会は衆議院の解散による総選挙後の国会です。
Q10 参議院の緊急集会
緊急集会の措置について正しい説明は?
Q10の解答・解説を開く
正解:1
- 1:臨時の措置を、その後の衆議院が確認する仕組みです。
- 2:解散するのは衆議院です。参議院は閉会しますが解散しません。
- 3:所定の期限内に衆議院の同意がない場合、効力を失います。
- 4:起点は次の国会が開会した後です。
4.法律案が法律になるまで
法律案は、まだ「提案」の段階
ここからは、法律ができるまでの流れを見ていきましょう。最初に出てくる法律案は、「こんなルールを作りませんか」という提案です。
法律案は国会議員も内閣も提出できます。議員が法律案を提出して法律を作ることは議員立法と呼ばれます。内閣が提出するものは内閣提出法案です。どちらの場合も、提出しただけで法律になるわけではありません。
委員会で詳しく調べ、本会議で議院の意思を決める
通常、提出された法律案は、まず委員会で詳しく審査します。その後、本会議で、その議院として賛成するか反対するかを決めます。さらに、もう一方の議院でも審議と議決を行います。
そして、原則として両議院が同じ内容を可決すれば、法律になります。順番を追うと、提出、委員会の審査、本会議の議決、もう一方の議院での審議・議決、という流れですね。
- ① 提出
国会議員または内閣が法律案を提出する。 - ② 一方の議院の委員会
専門的・具体的な内容を詳しく審査する。 - ③ その議院の本会議
議院として賛否を決める。 - ④ もう一方の議院でも審議・議決
こちらでも委員会の審査や本会議の議決を行う。 - ⑤ 原則、両議院が同じ内容を可決して成立
内容が異なる場合は、別の手続を確認する。
では、なぜ委員会で審査するのでしょうか。すべての議員が、すべての案件の細かい部分まで最初から調べるのは大変だからです。分野を分け、担当する議員が詳しく検討するわけです。
例えば学費支援なら、「誰を対象にするのか」「申請の手続が複雑すぎないか」といった点を確かめます。必要に応じて専門家の意見を聴くこともありますが、専門家が最終的に議決するのではありません。意見を聴くことと、議決することは別なんです。
本会議は、その議院の議員全員で構成される会議です。ただし、全員が実際に出席しないと開けない、という意味ではありません。必要な出席人数については、この後で整理します。
「可決した」というニュースだけでは、まだ分からない
ここで一つ、気をつけたいことがあります。「法律案が可決された」と聞いたら、どの段階で可決されたのかを確認してください。
委員会の可決なら、まだ途中の段階です。また、衆議院がA案、参議院がB案を可決したときも、内容が違うなら、それだけで一つの法律が成立するわけではありません。
なお、法律案は必ず衆議院から先に審議するとも限りません。先に衆議院へ提出しなければならないのは予算です。ここは、最後の衆議院の優越でもう一度確認しましょう。
成立・公布・施行は、それぞれ意味が違う
関連する三つの言葉も整理しておきます。必要な国会の議決が整い、法律になることが成立。成立した法律を広く知らせることが公布。そして、法律の効力を実際に生じさせることが施行です。
法律が成立しても、申請を受け付ける窓口や、事務の仕組みを用意する時間が必要かもしれませんよね。その場合は、法律を公布して知らせたうえで、後の日を施行日と定めることがあります。
つまり、成立したその日から、必ず新しい制度が動き出すわけではないんです。
法律のニュースを見るときは、誰が提案し、今どの審議段階にあり、両院の結論が一致したのかを確認しましょう。提出、可決、成立、公布、施行を分けると、流れが見えてきます。
この項目の確認問題(3問)
Q11 法律案の提出
法律案を提出する主体について正しいものは?
Q11の解答・解説を開く
正解:3
- 1:国会議員も提出できます。
- 2:内閣も提出できます。
- 3:内閣の提出権と、国会が立法を担うことは両立します。
- 4:提出だけで国会の議決に代えることはできません。
Q12 委員会と本会議
法律案の審議について正しいものは?
Q12の解答・解説を開く
正解:2
- 1:委員会の可決は審議の途中の段階です。
- 2:専門的な審査と議院としての議決の違いを押さえます。
- 3:意見を聴くことと議決することは別です。
- 4:全議員で構成されますが、全員の出席が必要なわけではありません。
Q13 成立・公布・施行
法律の効力が実際に生じることを指すのは?
Q13の解答・解説を開く
正解:4
- 1:法律案を国会に出すことです。
- 2:成立した法律を広く知らせることです。
- 3:必要な国会の議決が整い、法律になることです。
- 4:施行日まで準備期間を置く場合もあり、成立の日と同じとは限りません。
5.行政を調査し監視する
予算を認めたら、あとは任せっぱなし?
国会の仕事は、法律や予算を決めて終わりではありません。決めたことが、実際にどう行われているのかを確かめることも大切です。
例えば、学費支援の予算を認め、行政が事業を進めたとします。その後、政府が「きちんと使いました」と説明すれば、それだけで十分でしょうか。
「本当に必要な人に届いたの?」「不適切な支出はなかったの?」と、資料や関係者の話を通じて確認したいですよね。このように、各議院が国政を調べる権限を[9]国政調査権といいます。
調査のために、証人に来てもらって話を聴いたり、記録を提出するよう求めたりできます。また、行政を監視するだけでなく、新しい法律を作るために社会の実態を調べることにも使われます。
「各議院」の権限であることに注目しよう
ここで大事なのは、衆議院も参議院も、それぞれ国政調査権を持つということです。衆議院だけに認められた権限ではありません。
また、調査するために内閣の許可を得る必要もありません。調べられる側の内閣が、「その調査は都合が悪いので許可しません」と言える仕組みでは、十分に監視できませんよね。
ただし、調べる権限があるからといって、何でもできるわけではありません。裁判所に特定の判決を命じるような不当な干渉は認められません。最初に学んだ三権分立とも、つながる話です。
「誰が、何をするか」を、動詞まで確認しよう
次に、国会と内閣の仕事を整理します。「予算は国会」「条約は内閣」と、名詞だけで覚えると間違えやすいので、動詞までセットにしましょう。
予算は、国の収入や支出についての計画です。この案を作成して提出するのが内閣で、審議して議決するのが国会です。内閣が案を作っても、それだけで税金の使い方を自由に決められるわけではないんですね。
条約は、国際的な約束です。締結するのは内閣で、その締結について承認するのが国会です。国会の承認は原則として事前に行い、時宜によっては事後になる場合もあります。「国会が外国と条約を締結する」としないようにしてください。
そして、内閣総理大臣は、国会が国会議員の中から指名します。天皇は、その指名に基づいて任命します。指名と任命も、同じ言葉として扱わないことが大切です。
| 仕事 | 内閣などの役割 | 国会の役割 |
|---|---|---|
| 法律 | 内閣も法律案を提出できる。 | 法律を制定する。国会議員も法律案を提出できる。 |
| 予算 | 内閣が作成・提出する。 | 審議・議決する。 |
| 条約 | 内閣が締結する。 | 原則事前に、時宜によっては事後に、締結を承認する。 |
| 内閣総理大臣 | 天皇が国会の指名に基づき任命する。 | 国会議員の中から指名する。 |
予算は、内閣が作成し、国会が議決する。条約は、内閣が締結し、国会が承認する。首相は、国会が指名し、天皇が任命する。この組合せを声に出して整理すると、主体の取り違えを防ぎやすくなります。
この項目の確認問題(3問)
Q14 国政調査権
国政調査権の説明として正しいものは?
Q14の解答・解説を開く
正解:1
- 1:行政の監視や立法のための調査に役立ちます。
- 2:参議院にも認められます。
- 3:内閣の許可を要する制度ではありません。
- 4:裁判への不当な干渉は認められません。
Q15 予算と条約
主体と仕事の組合せとして正しいものは?
Q15の解答・解説を開く
正解:3
- 1:作成・提出は内閣、議決は国会です。
- 2:締結は内閣、承認は国会です。
- 3:予算という名詞だけでなく、作成と議決の動詞を区別します。
- 4:原則事前、時宜によって事後の承認です。
Q16 首相の指名と任命
内閣総理大臣について正しいものは?
Q16の解答・解説を開く
正解:2
- 1:天皇は国会の指名に基づいて任命します。
- 2:指名の主体と任命の主体を区別しましょう。
- 3:指名は国会、任命は天皇です。
- 4:日本では国会による指名の制度です。
6.議員の活動を守る二つの特権
議員に特別な保障があるのは、なぜ?
続いて、国会議員の特権を見ていきましょう。「特権」と聞くと、「議員だけ特別扱いなの?」と思うかもしれません。まずは、何を守るための仕組みなのかを考えます。
例えば、政府を厳しく追及する議員を、政府が都合よく逮捕して、国会に出られなくしたらどうでしょう。その議員は、質問も議決への参加もできなくなります。
困るのは議員本人だけではありません。その議員を通じて声を届けている国民にも影響しますよね。そこで、国民の代表としての活動を不当に妨げられないよう、一定の保障を設けているんです。
不逮捕特権は、犯罪の責任をなくす制度ではない
一つ目は[10]不逮捕特権です。法律の定める場合を除き、国会の会期中は逮捕されない、という保障です。
ただし、例外があります。院外での現行犯や、所属する議院の許諾がある場合には、逮捕が認められます。許諾とは、許可することです。衆議院議員なら衆議院、参議院議員なら参議院が判断します。
ここは、「逮捕されない保障」と「犯罪をしても責任を問われないこと」を分けてください。不逮捕特権があるからといって、犯罪の責任まで免除されるわけではありません。
また、会期中という条件もあります。議員でいる間は、いつでもあらゆる逮捕が禁止される、という意味ではないんです。
会期前に逮捕された議員については、所属する議院の要求があれば、会期中は釈放しなければなりません。「国会が始まれば自動的に釈放される」のではなく、議院の要求が必要だという点も確認しておきましょう。
免責特権は、どんな行為を守るの?
二つ目は[11]免責特権です。議院で行った演説・討論・表決について、院外で責任を問われない保障です。表決とは、賛成や反対など、議員としての意思を表すことです。
政府の問題点を指摘するたびに、院外で責任を追及される危険があれば、議員が発言を控えてしまうかもしれません。そこで、自由に議論し、意思を示せるようにしているんですね。
そうではありません。保障されるのは、議院で行った演説・討論・表決です。議員が私的なSNSで中傷した場合まで、「議員の発言だから必ず免責」とはなりません。
また、院外で責任を問われないことと、議院の内部で懲罰を受けないことも別です。内部では懲罰の対象となる場合があります。議院の中にいれば、暴力も含めて何でも免責される、というわけでもありません。
不逮捕特権は、会期中の逮捕に関する保障です。免責特権は、議院での演説・討論・表決について、院外で責任を問われない保障です。何を、どの場面で保障するのかを分けて覚えましょう。
この項目の確認問題(2問)
Q17 不逮捕特権の例外
不逮捕特権について正しいものは?
Q17の解答・解説を開く
正解:4
- 1:逮捕に関する保障であり、犯罪の責任を免除するものではありません。
- 2:院外の現行犯は例外です。
- 3:会期中の釈放には所属議院の要求という条件があります。
- 4:原則と例外を合わせて押さえます。
Q18 免責特権の範囲
免責特権として正しい説明は?
Q18の解答・解説を開く
正解:1
- 1:自由な議論や表決を支える保障です。
- 2:議員のあらゆる発言を保障する制度ではありません。
- 3:院内にいればすべての行為が免責されるわけではありません。
- 4:院外の責任と、議院内部の懲罰は別です。
この項目を自分の言葉で説明しよう(記述1)
まずは自分の言葉で考えてみましょう。「解答例を開く」で説明と確認ポイントを読めます。記述は自動採点ではありません。
記述1の解答例を開く
三権分立のもとで司法権は裁判所が独立して行使するため、国会も個々の裁判の結論を命じることはできない。最高機関という地位は、裁判所への無制限な指揮権を意味しない。
確認ポイント:三権分立、司法の独立、個々の判決を命令できないことの三点を結びつける。
7.会議を開く人数と可決する人数
30人のクラスで、3人だけが決めてもよい?
ここからは、人数の話に進みます。計算を始める前に、30人のクラスを想像してみてください。そのうち3人だけが集まり、2人が賛成したので、「これがクラス全員の決定です」と言ったとします。
確かに、その場にいる3人の中では賛成が多数です。でも、そもそも3人だけでクラス全体のことを決めてよいのか、という問題がありますよね。
このように、会議を開くのに必要な出席人数と、議案を可決するのに必要な賛成人数は、別々に考える必要があります。
定足数は、会議を開くための条件
議事を開き、議決するために必要な出席人数を[12]定足数といいます。各議院の本会議では、その議院の[13]総議員の3分の1以上の出席が必要です。
例えば、総議員が300人なら、3分の1は100人です。99人しか出席していなければ、たとえ99人全員が賛成しても、必要な出席人数を満たしていません。賛成が多いかどうかの前に、まず会議を開ける人数なのかを確かめるわけです。
通常の議決は、出席議員の過半数
では、必要な人数が出席していれば、何人の賛成で決まるのでしょうか。憲法に特別の定めがある場合を除き、通常の議事は[14]出席議員の過半数で決します。
先ほどは総議員を使いましたが、今度は出席議員です。まず、この分母の違いに注目してください。
そして、過半数は半分を超える数です。10人の半分は5人ですが、5人ちょうどでは過半数になりません。最小で6人が必要です。
なお、可否同数になったときは、議長が決します。過半数に当たる人数を求める話と、可否同数のときにどうするかという話は、分けて押さえておきましょう。
総議員を基準に、必要な出席人数を確認。
本会議:総議員の1/3以上手続ごとに、分母と必要な割合を確認。
通常:出席議員の過半数同じ3分の2でも、誰の3分の2?
特別な手続では、過半数より多い賛成が必要になることがあります。例えば、衆議院で法律案を再可決するときは、衆議院の出席議員の3分の2以上が必要です。再可決の仕組みは、最後の項目で詳しく扱います。
秘密会や議員の除名も、その議院の出席議員の3分の2以上が必要です。本会議は公開が原則ですが、秘密会では一般には公開せずに会議を行います。議長が一人で「今日は秘密にしよう」と決めればよいわけではありません。
除名は、懲罰として議員の身分を失わせることです。議員への懲罰にはほかの種類もあるので、「懲罰はすべて除名」とは考えないようにしましょう。
そして、特に気をつけたいのが憲法改正の発議です。こちらは、各議院の総議員の、それぞれ3分の2以上の賛成が必要です。
再可決は衆議院の出席議員、憲法改正の発議は各議院の総議員。同じ3分の2でも、誰を分母にするかが違うんですね。
発議とは、国会が憲法改正案を国民に提案する段階です。発議できれば改正が終わるのではなく、その後に国民投票による承認が必要です。
| 手続 | 分母 | 必要な条件 |
|---|---|---|
| 本会議の定足数 | 各議院の総議員 | 3分の1以上の出席 |
| 通常の議決 | その議院の出席議員 | 過半数。可否同数は議長が決する。 |
| 法律案の衆議院での再可決 | 衆議院の出席議員 | 3分の2以上の賛成 |
| 秘密会・議員の除名 | その議院の出席議員 | 3分の2以上の賛成 |
| 憲法改正の発議 | 各議院の総議員 | それぞれ3分の2以上の賛成 |
補足として、今扱った「3分の1以上」は本会議の定足数です。委員会の定足数は、その委員の半数以上になります。国会で行う会議は何でも3分の1、と広げないようにしてください。
人数の条件は、何の手続か、総議員か出席議員か、必要な割合は何か、という順に確認しましょう。分母を決めてから計算すると、似た数字が出てきても整理しやすくなります。
この項目の確認問題(3問)
Q19 定足数の分母
本会議の定足数として正しいものは?
Q19の解答・解説を開く
正解:3
- 1:出席している人数を分母にして定足数を判定するのではありません。
- 2:本会議では3分の1以上です。
- 3:議院ごとに総議員を基準にします。
- 4:各議院がそれぞれ満たす必要があります。
Q20 通常の議決
通常の議事の決定方法として正しいものは?
Q20の解答・解説を開く
正解:4
- 1:通常の議決は出席議員が基準で、同数は議長が決します。
- 2:半分ちょうどは過半数ではありません。
- 3:3分の2以上は再可決など特別な場合です。
- 4:憲法に特別の定めがある場合を除く原則です。
Q21 秘密会・除名と憲法改正
正しい組合せはどれ?
Q21の解答・解説を開く
正解:2
- 1:秘密会も改正発議も、示された条件ではありません。
- 2:同じ3分の2以上でも、分母が違います。
- 3:秘密会・除名は3分の2以上。改正発議は両議院それぞれで必要です。
- 4:両院の人数は合計しません。
8.架空の人数で計算してみよう
総議員300人、出席240人で考えよう
では、実際に人数を計算してみましょう。ここでは、総議員が300人、出席議員が240人とします。仕組みを理解するための架空の人数で、実際の日本の議員数ではありません。
300人と240人、二つの数字がありますね。どちらを使うかを、手続ごとに選んでいくのが今回のポイントです。
定足数・憲法改正の発議の基準
通常の過半数・法律案の再可決の基準
① 本会議の定足数は、100人
最初は、会議を開くための定足数です。分母は総議員でしたね。300人の3分の1なので、100人以上の出席が必要です。
300 × 1/3 = 100人
今回は240人が出席しています。必要な100人を上回っていますから、定足数を満たしています。
② 出席議員の過半数は、最小121人
次は、通常の議決に使う過半数です。今度は出席議員の240人を使います。半分は120人ですが、過半数は半分を超える数なので、最小で121人になります。
240 ÷ 2 = 120 → これを超える最小人数は121人
120人と答えたくなったら、「半分ちょうどは入らない」と思い出してください。
③ 法律案の再可決には、160人以上
では、衆議院で法律案を再可決する場合はどうでしょうか。分母は、衆議院の出席議員です。240人の3分の2を計算すると、160人になります。
240 × 2/3 = 160人
今回は「以上」なので、160人ちょうどを含みます。賛成が150人なら、過半数は超えていますが、再可決に必要な160人には届きません。普通の過半数と、再可決の条件は別なんです。
④ 憲法改正の発議には、この議院で200人以上
今度は憲法改正の発議です。ここでは、分母を総議員の300人に戻します。300人の3分の2ですから、200人以上の賛成が必要です。
300 × 2/3 = 200人
そして、もう一方の議院でも、その議院の総議員の3分の2以上の賛成が必要です。二つの議院の人数を足して判定するわけではありません。
仮に、両議院の総議員がそれぞれ300人だったとしましょう。一方の賛成が220人、もう一方が180人なら、合計は400人です。それでも、発議はできません。
なぜかというと、180人の議院では、必要な200人に届いていないからです。それぞれの議院が条件を満たさなければならない、ということですね。
出席が241人になると、答えはどう変わる?
最後に、出席議員が241人になった場合を考えましょう。まず過半数です。241を2で割ると120.5ですから、これを超える最小の整数は121人です。
次に、出席議員の3分の2以上です。241に3分の2を掛けると、160と3分の2になります。人数を小数や分数のままにはできませんから、この値以上になる最小の整数、つまり161人が必要です。
160人では必要な割合に届きません。ここは四捨五入ではなく、条件を満たす最小の整数を選びます。3分の2以上なら、計算結果が整数のときはそのまま、端数が出たときは切り上げる、と考えてください。
出席240人なら、過半数は121人、3分の2以上は160人。出席241人なら、過半数は121人、3分の2以上は161人です。数字だけで覚えず、分母と条件から計算できるようにしましょう。
ここでは、与えられた人数に対する割合を計算しています。実際の採決では議長の扱いなども関わるので、この単純な人数設定だけから個別の議決結果まで決めつけないようにしてください。
この項目の確認問題(5問)
Q22 出席人数の条件
総議員300人の本会議で、出席99人全員が賛成した。正しい判断は?
Q22の解答・解説を開く
正解:1
- 1:300×1/3=100人以上の出席が必要です。
- 2:賛成割合と、必要な出席人数は別です。
- 3:分母は総議員300人です。
- 4:まず定足数を満たしているか確認します。
Q23 240人の過半数
出席議員240人の過半数に当たる最小人数は?
Q23の解答・解説を開く
正解:2
- 1:半分ちょうどなので過半数ではありません。
- 2:240÷2=120を超える最小の整数は121です。
- 3:240人の3分の2です。
- 4:総議員300人の3分の2と混同しないようにしましょう。
Q24 法律案の再可決
衆議院の出席議員が240人の場合、法律案の再可決に必要な賛成の最小人数は?
Q24の解答・解説を開く
正解:3
- 1:総議員300人の定足数の例です。
- 2:通常の過半数の最小人数です。
- 3:240×2/3=160。以上なので160人を含みます。
- 4:出席議員240人を分母に計算します。
Q25 241人の場合
出席241人の「過半数」と「3分の2以上」に当たる最小人数の組合せは?
Q25の解答・解説を開く
正解:4
- 1:120人は半分を超えず、160人は3分の2に届きません。
- 2:241×2/3=160と2/3なので、160人では不足です。
- 3:241÷2=120.5なので121人で過半数になります。
- 4:120.5を超える最小整数は121。160と2/3以上の最小整数は161です。
Q26 改正発議は議院ごとに判定
両議院の総議員がそれぞれ300人。改正発議への賛成が一方220人、他方180人の場合は?
Q26の解答・解説を開く
正解:3
- 1:各議院ごとに条件を満たす必要があり、合計しません。
- 2:改正発議には衆議院の優越がありません。
- 3:300×2/3=200人を、それぞれの議院で満たす必要があります。
- 4:国会の発議と国民投票による承認は別の段階です。
この項目を自分の言葉で説明しよう(記述2)
まずは自分の言葉で考えてみましょう。「解答例を開く」で説明と確認ポイントを読めます。記述は自動採点ではありません。
記述2の解答例を開く
241÷2=120.5を超える最小の整数は121である。241×2/3=160と2/3以上の最小の整数は161である。人数は整数なので、必要な割合に届く最小人数を選ぶ。
確認ポイント:過半数は半分を超えること、3分の2以上は計算結果以上であることを区別し、四捨五入しない。
9.両院の意思が一致しないとき
両院の意見が違ったら、どう決める?
最後に、衆議院と参議院の結論が一致しなかった場合を考えましょう。二つの議院で話し合う以上、意見が分かれることもありますよね。
そこで、一定の事項について衆議院の議決などを優先する仕組みがあります。これが[15]衆議院の優越です。衆議院は任期が短く解散もあるため、最近の民意を反映しやすいと説明されます。
ただし、「参議院は国民の代表ではない」という意味ではありません。また、「衆議院なら何でも単独で決められる」と覚えるのも誤りです。何について決めるのかによって、使える仕組みと条件が違います。
両院の意見を調整するために開くのが[16]両院協議会です。これを開く必要があるかどうかも、法律案と、予算などとでは異なります。順番に整理していきましょう。
法律案は、衆議院で3分の2以上の再可決
まず、衆議院が可決した法律案を、参議院が否決したとします。このとき、衆議院の最初の可決だけで、すぐ法律になるのでしょうか。そうではありません。
衆議院で、出席議員の3分の2以上の賛成により、もう一度可決すると法律になります。これが再可決です。先ほどの出席240人の例なら、160人以上の賛成が必要でしたね。
最初に過半数で可決できたことと、3分の2以上で再可決できることは別です。また、法律案では両院協議会を求めることもできますが、必ず開かなければ再可決できない、というわけではありません。
予算は、協議しても一致しなければ衆議院の議決
次は予算です。両院の議決が異なった場合は、両院協議会を開いて意見を調整します。それでも一致しないときは、衆議院の議決が国会の議決になります。
では、法律案のように、衆議院で3分の2以上の再可決をする必要はあるのでしょうか。ありません。予算では、両院協議会でも一致しなければ、衆議院の議決が国会の議決となるんです。
条約締結の承認も、予算と同じ仕組みです。ここで扱っているのは、内閣が締結する条約について、国会が承認する手続だということも思い出してください。
首相の指名が食い違った場合も、まず調整する
例えば、衆議院がAさんを首相に指名し、参議院がBさんを指名したとします。この場合も、両院協議会で意見を調整します。
それでも一致しなければ、衆議院が指名したAさんを、国会が指名したことになります。参議院では首相の指名をしない、という意味ではありません。両議院で指名したうえで、食い違ったときの手続が決まっているんですね。
衆議院で可決
↓
参議院が異なる議決
↓
衆議院の出席議員の2/3以上で再可決
↓
法律として成立
両院の議決が異なる
↓
両院協議会
↓
意見が一致しない
↓
衆議院の議決が国会の議決となる
「違う結論を出した」と「まだ結論を出さない」を分けよう
ここまでの話は、両院が異なる議決をした場合でした。ここからは、参議院が議決しないまま、一定の期間が過ぎた場合です。反対という結論を出したことと、結論を出していないことは、分けて考えます。
法律案では、参議院が衆議院の可決した案を受け取った後、国会休会中の期間を除いて[17]60日以内に議決しない場合、衆議院は参議院が否決したものとみなすことができます。
少し長いですが、最後の言葉に注目してください。「法律が成立する」ではなく、「否決したものとみなすことができる」です。60日が過ぎただけで、自動的に法律になるわけではありません。
この仕組みを使って法律を成立させるには、さらに衆議院で、出席議員の3分の2以上による再可決が必要になります。
予算と条約承認は30日、首相指名は10日
一方、予算では、参議院が衆議院の可決した予算を受け取った後、国会休会中の期間を除いて[18]30日以内に議決しないと、衆議院の議決が国会の議決になります。条約承認も30日です。
法律案のように、「否決とみなして、さらに再可決する」という話ではありません。日数だけでなく、その後どうなるのかまで区別してください。
首相の指名は10日です。衆議院が指名の議決をした後、国会休会中の期間を除いて10日以内に参議院が指名の議決をしないと、衆議院の議決が国会の議決になります。
法律案・予算・条約承認は、参議院が受け取った後から数えます。首相指名は、衆議院が指名した後です。何の日から数えるかも、合わせて確認しましょう。
| 事項 | 両院が異なる議決をした場合 | 参議院が議決しない場合 |
|---|---|---|
| 法律案 | 衆議院の出席議員の3分の2以上で再可決すれば成立。両院協議会は任意。 | 受領後60日以内に議決しなければ、衆議院は否決とみなせる。自動成立ではない。 |
| 予算 | 両院協議会でも一致しなければ、衆議院の議決が国会の議決となる。 | 受領後30日以内に議決しなければ、衆議院の議決が国会の議決となる。 |
| 条約締結の承認 | 予算と同じ。 | 受領後30日以内に議決しなければ、衆議院の議決が国会の議決となる。 |
| 首相の指名 | 両院協議会でも一致しなければ、衆議院の議決が国会の議決となる。 | 衆議院の指名後10日以内に議決しなければ、衆議院の議決が国会の議決となる。 |
衆議院に先に出すものと、優越がないもの
最後に、二つ補足します。一つ目は、予算は必ず衆議院に先に提出するということです。これが予算の先議権です。法律案や条約承認に、同じ先議義務があるわけではありません。
二つ目は、憲法改正の発議には衆議院の優越がないということです。各議院で、それぞれ総議員の3分の2以上の賛成が必要です。衆議院の賛成が多くても、参議院の不足を補えない、という話につながりますね。
衆議院の優越の問題では、まず法律案なのか、予算なのか、何の事項かを確認します。次に、両院が異なる議決をしたのか、参議院が議決していないのかを分けます。そのうえで、必要な手続と日数を当てはめましょう。「60・30・10」の後に何が起こるかまで言えれば、理解がぐっと確かになります。
この項目の確認問題(5問)
Q27 テキストE1:法律案と予算
テキストの確認問題E1です。法律案と予算について、正しい説明はどれ?
Q27の解答・解説を開く
正解:3
- 1:参議院の否決だけで直ちに成立するわけではなく、事項に応じた手続が必要です。
- 2:衆議院への先議義務があるのは予算です。
- 3:予算で両院が異なる議決をした場合の手続を正しく説明しています。
- 4:3分の2以上の再可決は法律案のルールです。
Q28 60日ルールの結論
参議院が衆議院の可決した法律案を受け取り、国会休会中を除く60日以内に議決しなかった。正しい説明は?
Q28の解答・解説を開く
正解:2
- 1:60日経過は自動成立の条件ではありません。
- 2:否決とみなすことと、3分の2以上で再可決することを分けます。
- 3:みなせるのは可決ではなく否決です。
- 4:予算などのルールを法律案に当てはめないでください。
Q29 30日ルール
予算を参議院が受領し、国会休会中を除く30日以内に議決しなかった場合は?
Q29の解答・解説を開く
正解:4
- 1:そのような再可決は要件ではありません。
- 2:法律案の60日ルールとの違いです。
- 3:法律案の再可決の条件と混同しています。
- 4:予算と条約承認の30日ルールを確認しましょう。
Q30 条約承認と首相指名
参議院が議決しない場合の日数の組合せとして正しいものは? 国会休会中の期間は除く。
Q30の解答・解説を開く
正解:1
- 1:日数だけでなく起点の違いも押さえます。
- 2:60日は法律案。首相指名は10日です。
- 3:法律案の60日をすべてに適用することはできません。
- 4:30日と10日が逆です。
Q31 両院協議会と先議権
正しい説明はどれ?
Q31の解答・解説を開く
正解:3
- 1:法律案について両院協議会の要求は任意です。
- 2:条約承認には予算と同じ先議義務はありません。
- 3:予算の先議権と、両院不一致時の手続の両方が正しい説明です。
- 4:各議院の総議員の3分の2以上が必要です。
この項目を自分の言葉で説明しよう(記述3)
まずは自分の言葉で考えてみましょう。「解答例を開く」で説明と確認ポイントを読めます。記述は自動採点ではありません。
記述3の解答例を開く
法律案は受領後60日以内に議決しないと、衆議院が否決とみなすことができる。その経路での成立には、さらに衆議院で出席議員の3分の2以上による再可決が必要となる。予算は受領後30日以内に議決しないと、衆議院の議決が国会の議決となる。日数はいずれも国会休会中の期間を除く。
確認ポイント:60日と30日の違いに加え、否決とみなせることと、衆議院の議決が国会の議決になることを区別する。
今回のまとめ
では、今回の内容を振り返りましょう。国会は、国民の代表が集まり、法律を定め、予算を議決し、行政を監視する機関でした。二院制や議員の特権も、こうした役割を果たすための仕組みとして考えると、意味がつながります。
人数の問題では、何の手続かを確認し、総議員と出席議員のどちらを使うかを選び、それから割合を計算します。衆議院の優越では、何の事項か、両院が異なる議決をしたのか、それとも参議院が議決していないのかを分けましたね。迷ったら、この順番に戻ってみてください。用語や数字を、実際に使う場面と結びつけていきましょう。
